2012年04月21日

なぜ仙台方式はうまくいったのか

昨年の6月時点で、仙台市はがれき処理を独自にすすめて効果をあげていました。
なぜ仙台方式はうまくいったのでしょうか?

まず広域処理ありきの考え方を見直さなくてはいけないのではないでしょうか。


仙台式がれき処理軌道に 地元業者に優先発注推進
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1062/20110627_08.htm
2011年06月27日河北新報ニュースより。

東日本大震災で大量に生じた震災廃棄物。仙台市が「復興の第一関門」と位置付ける自己完結型の処理が、軌道に乗り始めた。「環境先進都市」を掲げる市は、年間ごみ排出量の3倍に当たる103万トンのがれきを10種類以上に分別し、リサイクル率50%以上を目指す。一連の作業は地元業者に優先発注し、震災で冷え込んだ地域経済の下支えにもなっている。

<3ヵ所に整備>
 津波に襲われた宮城野区の蒲生搬入場。がれきを満載したダンプカーが絶え間なく出入りし、重機のエンジン音がうなりを上げる。場内には冷蔵庫やテレビ、木くずなどが整然と積まれ、幾つもの山ができている。
 「がれきを早く処理できれば、復興のスピードも上がる。分別をいかに効率化できるかが勝負」。管理を請け負うジャパンクリーン(青葉区)の杉沢養康社長は「分別処理のモデルをここで見せたい」と意気込む。
 市は蒲生と若林区の荒浜、井土の3カ所に計約100ヘクタールの搬入場(仮置き場)を整備した。もともとは海岸公園や防災林。津波で被災し、周辺の居住者もほぼ避難したため、海辺に広大な平地を確保できた。
 東部沿岸地域を中心に9000棟と見込まれる損壊家屋の解体撤去は、6月中旬から本格化した。重機と運搬車、作業員によるチームを編成。現場でがれきを(1)可燃物(2)不燃物(3)資源物―に大まかに分け、搬入場での分別の効率化につなげる。 徹底した分別が奏功し、既に鉄くずはリサイクルのルートに乗った。リサイクルに回せない可燃物は破砕するなどして、10月に稼働する仮設の焼却炉で焼却処分する。

 3カ所にはこれまで約20万トンが運び込まれ、進行率は約19%。7月には農地のがれき収集に着手し、総勢約200チームが活動する。本年度内に搬入を終え、2013年度末までに処理を終える計画で、萱場道夫環境局長は「作業は当初の予定より前倒しで進んでいる」と自信を見せる。

<業界「使命感」>
 市はこうした業務の割り振りを仙台建設業協会(81社加盟)と宮城県解体工事業協同組合(44社)に委託。仙台建設業協会の深松努副会長は「災害ですぐに動けるのは地元の組織。年度末の災害で資金繰りが苦しい中、誇りと使命感で取り組んでいる」と自負する。

 両団体は震災直後から人命救助や道路のがれき撤去、遺体捜索に携わってきた。県解体工事業協同組合の佐藤正之理事長は「一番先にやらなければならない最前線の仕事だった。業界の存在意義を考えさせられた」と言う。
 がれき以外にも市は被災自動車9700台、ヘドロや土砂といった津波堆積物130万トンなどを処理する必要があり、総費用は1000億円にも達する。土砂やコンクリートくず、アスファルトくずについては震災復興ビジョンに掲げた東部沿岸地域の防災施設や県道、宅地のかさ上げに活用できないか検討する。
 市が処理主体となって極力、リサイクルを進め、地元業者も活用する「仙台方式」。県による2次仮置き場の選定が遅れ、対応に苦慮する被災自治体の注目も集めている。業界関係者からは「宮城、東北をけん引する百万都市として、がれき処理の見通しがつけば他自治体の処理を引き受けるべきだ」との声も出ている。


仙台市のがれき自前処理の状況
青木泰のブログより。
http://gomigoshi.at.webry.info/201202/article_3.html

仙台方式についての見解が改めて話題になっています。この件を私が知った後、週刊金曜日(12月9日号)に報告し(添付)、今年になって1月10日の静岡市の講演の後、地域誌「スローライフ」が取り上げ(添付)脱原発国際会議では、新神奈川新聞も取材の翌日取り上げ、そしてNHKもこの件を追跡取材することを約束しました。

 週刊金曜日の記事が、きっかけになって、東京新聞の取材も入り、1月21日の「こちら特報部」の記事につながりました。

 石原都知事に代表される様に、「復興のためにがれき処理は不可欠。」「がれきを受け入れなければ復興ができない」という世論が一般的な中、ジャーナリズム感覚を持ったメディア的にも、大変注目される仙台市の取り組みでした。

 仙台方式に独自の見解を示された辻さんのようなご意見は、珍しく貴重なご意見として私の意見を下記に書きました。



 私が仙台方式について知ったのは、昨年の廃棄物資源循環学会(11月3日〜5日)の企画部門での講演会「地震列島日本の『災害廃棄物処理計画』−過去から未来への伝えるべきこと(1)」です。午前中いっぱい使った講演発表会は、素晴らしいものでした。(別途添付のPDF)阪神淡路のがれき処理の経験者である神戸市の職員笠原敏夫氏、仙台市の震災廃棄物対策室の遠藤守也氏、そして民間のコンサルタントの報告でした。

 被災地の現場は、津波で根こそぎ持って行かれ、ほとんど何もない状態です。がれきがどれだけ排出されるのか。その推定と計算の作業を行うことが最初の仕事です。仙台市の4〜5年分の135万トン。その推定を学者の知見を参考にしながら行い、がれき処理の大きなデッサンを作るために、阪神淡路の経験を学ぶ。そして長くごみ問題に取り組んできた京都大学の浅利美鈴助教の助けを得ながら、災害廃棄物の分別・資源化、危険物・有害物の除去を測る仕組みを実施する。(別途送付の添付PDF)

 仙台市のがれきの処理は、ごみ問題の処理の基本に沿って、排出源での分別に心がけ、国の方針では、宮城・岩手県は広域化=全国化を進めるとされていたのを、地元で独自に目途を付けたのです。その実践力に拍手です。

 遠藤氏は“環境部の最終処分場”と呼ばれているそうで、解決できない問題が持ち上がると遠藤さんに相談に来るということでした。そうした普段からの活動ぶりが、がれき処理に当たって、さまざまなところから協力を得ることができる原動力になったのだと思います。

 彼の講演を聞いていて土木建設関係の設計ができる職員の応援を得た。そのことも実現できた要因だったと強調していたのが、印象に残りました。環境部や廃棄物関連だけでは、仮設置き場を建設する工事準備(例えば搬入車両の進入路、置き場の配置設計など)が行えないことは、一目瞭然です。

 元々自治体の職員は、文科系であり、設計や企画の専門職がいる場合でも、民間の事業者の助けを得なければ、構想を実現することはできません。自治体と民間を結ぶツールの一つが図面です。その点を踏まえた人材集めを行った。

 そして阪神淡路の経験を聞くことができたとしても、阪神淡路とは違い、倒壊のほとんどは、津波によるもので、こうした震災がれきの処理は、一つ一つが白紙に絵を書くような難しさがあります。報告の端々からさまざまな工夫を行ってきたことが伝わってきました。


 たとえば仙台市は、がれきの処理体制として、

1. 不明者捜索に係わるがれき類の撤去(人命隊)

2. 浸水地域の家財類の撤去(濡れごみ隊)

3. 道路啓開がれき類の撤去(道路隊)

4. 被災車両の撤去(車両隊)

5. 流失家屋の撤去(がれき隊)

6. 損壊家屋の解体・撤去(解体隊)
 ・・・・・・

 というように処理体制を作り、2013年度末には、片づける目途を付けました。

 被災地のがれき処理という大変深刻な作業であるにもかかわらず、楽しく一生懸命に取り組んできたことが伝わってくる内容でした。

 仙台市が市単独ではなく、民間の事業者の協力も得、国も県も実現できなかったことを、多くの協力をつなぎ合わせて、実現してきたことは事実です。その際、委託を使ったか、職員だけでやったかなどは、労働組合的には大事かもしれませんが、はっきり言って瑣末な事です。広域化の流れの中で、自前・地元で実現した事実が大事だと思います。

 週刊金曜日にも書きましたが、まだ山積にされているがれきを持つ市町村があることは、事実です。私はがれきの処理方針としてこの仙台モデルを活用して全国への広域化ではなく、地元・自前の処理が最善と考えています。そしてその時にこそ全国の「力のある自治体」が、「人」「知恵」「技術」「機材」「金」などで支援する体制を作るべきと思います。

 仙台モデルがそのまま合わないケースもあると思います。しかしわれわれが行う仕事で考えれば、そうした新たな課題があってこそ、汗を流す甲斐があると思います。

 静岡の島田市の講演会の後の座談会で、「がれきの受け入れに反対すると、復興支援に反対するのかとつまはじきにされる地元の状況がある」ことを聞きました。

 そうした時、がれきの処理は被災地でもできる。放射能汚染ごみや、有害ごみの混入、拡散を避けるためにも地元での分別処理が、まず大切だということ。その第1歩を開いてくれた仙台市方式は、島田市のような実践的な格闘を行っている場所にとっては、勇気を与えてくれる貴重な実践例だと考えます。

 がれきは地方で受け入れでなく、仙台方式を広めるために、「人」「知恵」「技術」「物=機材」「金」の支援を。
 

 追)企画部門での講演会だけでなく、廃棄物資源循環学会の全体シンポジウムでも遠藤さんや浅利さんらの取り組みが報告、紹介されました。それにしても震災列島日本で、さまざまな震災や風水害がある中で、国は何をしていたのかと思います。これまでの災害復旧は、市町村や県のレベルでの経験蓄積に終わっている。阪神淡路の震災後のがれきの対策のノウハウは、国家レベルで継承されていない。大きな災害は、何十年単位で来るため、同様の災害が起きたときには、県レベルでも経験した職員すらいなくなっていることが一般的でしょう。

 仙台市は、笠原さんら阪神淡路の経験を直接学んだが、国に過去の災害、その復旧の経験蓄積がなかったことから生まれた工夫だったといえる。本来なら国に緊急災害特別隊―企画作戦部門等を設け、全国各地の経験を引っさげ、地元の自治体とのがれきやー復興支援に入る。そうしたことが必要だろう。

 企画部門の講演会が終わったときに、遠藤さんらにしばらくこの経験を生かし、仙台方式で他の市町村のがれき処理に、汗を流してもらえないかと話したが、国のレベルでもこの貴重な経験を財産にし、今残るがれきの処理に取り組むべきだと私は考える。その経験蓄積が、今うわさされている首都圏直下型の震災にも生かされてゆくことになる。



平成24年3月12日時点では仙台市の進捗率 9.9%ですが、
それでも「処理作業は順調で完了目標の相当程度の前倒しが見込めるので、
2013年夏にも他の被災市町の廃棄物を受け入れる余力が生じる」と県に伝えたそうです。
(2012/01/28 河北新報)

仙台市、被災12市町のがれき受け入れ 宮城県委託分
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1062/20120128_01.htm

東日本大震災で発生した宮城県内の災害廃棄物をめぐり、仙台市が他の被災市町のがれきを受け入れる意向を県に伝えたことが27日、分かった。受け入れ量は未定だが、県が被災12市町から処理を委託されている廃棄物の一部を引き受ける。
 仙台市が建設した宮城野区蒲生地区など3カ所の仮設焼却炉で処理する方針。市内廃棄物の処理の進展状況を勘案しながら、今春にも受け入れ量や時期などを固める。
 県が受託した災害廃棄物を、発生地域以外の自治体が受け入れるのは初めて。県環境生活部は「がれきの処理スピードの加速が期待される」と話している。
 仙台市内で発生した災害廃棄物は約135万トン。処理作業は順調に進み、市は昨年12月の市議会定例会で、2013年度末に設定した完了目標の相当程度の前倒しが見込めると説明。13年夏にも他の自治体の廃棄物を受け入れる余力が生じるとの見通しを示していた。
 県内で発生した災害廃棄物は約1570万トン。県は被災12市町から少なくとも1200万トン以上の処理を受託した。2次仮置き場の用地確保や放射性物質の影響により広域処理が難航し、計画の遅れが懸念されている。
posted by ぱわふる at 22:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 被災地の動き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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